損害保険鑑定人は、火災や地震、台風、大雨などによって建物や家財に被害が発生したとき、現場を確認して損害の状況を調査する仕事です。
現場調査では、建物の状態を確認するだけでなく、被害の範囲や程度を記録したり、契約者から被害状況を聞き取ったりします。
そのため、鑑定人は現場へ行く際に、さまざまな道具を持っていきます。
今回は、損害保険鑑定人が現場調査に持っていくものを紹介します。
ただし、毎回すべて同じ道具を持っていくわけではありません。
地震なのか、水害なのか、火災なのか。 建物の種類や調査場所、季節によっても、準備するものは変わります。
損害保険鑑定人が現場に持っていく基本の道具
まずは、現場調査で使用する基本的な道具です。
- 損害箇所を記録するためのメモ・簡易図面
- カメラ・スマートフォン
- メジャー
- 筆記用具
- 懐中電灯
- 安全装備
- その他、調査内容に応じた資料

損害箇所を記録するためのメモ
現場では、損害の場所や内容をその場で記録することもあります。
住宅の簡単な平面図を描いて、
- どの部屋に被害があるか
- 壁のどの位置にひび割れがあるか
- 建具や床にどんな損害があるか
- 屋外のどこに損害があるか
などをメモしていきます。
写真だけでは、あとから見返したときに「この損害は家のどこだったっけ?」となることもあるので、写真とメモを組み合わせて記録するイメージです。

コピーした間取り図が用意されていると、かなり嬉しいです!
写真撮影に使うもの
現場調査で欠かせないのが、写真を撮影するための道具です。
損害調査では、被害箇所を確認するだけでなく、その状態を記録として残す必要があります。
例えば、次のような写真を撮影します。
- 建物全体の状況
- 被害が発生している場所
- 壁や天井、床などの損傷
- 屋根や外壁の被害
- 建具や設備の破損状況
- 被害箇所の細部
被害箇所だけを近くから撮影しても、建物のどの部分なのか分からなくなることがあります。
そのため、全体の写真を撮影したうえで、徐々に細かい部分を撮影していくことが大切です。
写真は、現場での確認内容を後から振り返るためにも重要な資料になります。
寸法を確認するための道具
建物の損害は、「壊れているかどうか」だけではなく、どのくらいの範囲に被害があるのかを確認する必要があります。
そのため、寸法を測る道具も使用します。
例えば、
- メジャー
- スケール
- レーザー距離計
- その他、寸法確認に使う道具
などです。
壁や天井のひび割れ、床の損傷、浸水した範囲など、被害の大きさを確認する場面はさまざまです。
また、部屋の大きさや建物の寸法を確認する場合もあります。
現場では、写真と寸法を組み合わせて記録することで、被害の状況をより具体的に整理することができます。
記録や聞き取りに使うもの
現場調査では、写真や寸法だけでは分からないこともあります。
そのため、契約者や関係者から話を聞き、必要な内容を記録します。
例えば、
- いつ被害が発生したのか
- どのような災害が原因だったのか
- 被害が発生した場所
- 被害が発生したときの状況
- すでに修理や片付けを行っているか
- 以前から同じような損傷があったか
などです。
記録には、筆記具やメモ帳、調査用紙、タブレットなどを使用します。
現場では、後から確認したいことが出てくる場合もあるため、その場で気づいたことを記録しておくことが大切です。
暗い場所や細かい部分を確認するもの
建物の中には、十分な明るさがない場所や近づけない場所もあります。
例えば、
- 床下
- 天井裏
- 収納の奥
- 建物の隅
- 日当たりの悪い場所
- 設備の裏側
などです。
こうした場所を確認するために、ライトや双眼鏡などを使用することがあります。
ただし、暗い場所や狭い場所であれば、無理に入り込めばよいというわけではありません。
調査する場所の安全を確認し、必要に応じて確認できる範囲で調査します。
安全を確保するためのもの

現場調査では、損害を確認するための道具だけでなく、安全のための装備も必要です。
例えば、
- マスク
- 雨具
- 手袋
- 防寒具
- 暑さ対策用品
- ヘルメット
- 安全靴や長靴
などです。
災害後の建物には、見た目では分からない危険が残っていることがあります。
地震の後であれば、建物の傾きや落下物。 水害の後であれば、ぬかるみや汚泥、衛生面の問題。 火災の後であれば、焼損した部材や足元の危険などです。
損害を確認することは大切ですが、まずは調査する自分自身の安全も考えながら、できる限りの調査を心がけています。
現場によって持っていくものは変わる
損害保険鑑定人の持ち物は、どの現場でも同じというわけではありません。
災害の種類や建物の状態によって、必要な道具や装備を追加します。
地震の現場の場合
地震の現場では、建物の外側だけでなく、室内の被害を確認することもあります。
例えば、
- 外壁の損傷
- 建具の開閉不良
- 柱や梁などの損傷
- 家財の転倒や破損
- 建物の傾き
などです。
また、地震後の建物では、落下物や倒壊の危険が残っている場合もあります。
そのため、道具を準備するだけでなく、建物の状態を見ながら、どこまで調査できるのかを判断する必要があります。
水害・浸水の現場の場合
水害の現場では、床や壁、建具、設備などに浸水被害が発生することがあります。
現場によっては、泥や水が残っていたり、床が滑りやすくなっていたりすることもあります。
そのため、
- 長靴
- 防水用品
- 手袋
- マスク
- 汚れ対策用品
- 着替え
- タオル
などが必要になる場合があります。
水害では、浸水した高さや範囲を確認することも重要です。
ただし、被害の状況によっては、すでに片付けや清掃が進んでいる場合もあります。
その場合は、現場の状況を確認するとともに、被災直後の写真や契約者からの聞き取りなども参考にしながら調査します。
屋根や高い場所を確認する場合
台風や大雨、強風などの被害では、屋根や外壁、雨樋など、高い場所に損害が発生していることがあります。
そのような場合には、高所カメラなどを使って地上から確認することがあります。ただし、調査の内容や状況によっては、高所カメラを持参していない場合もあります。
そのため、現場では、
- 地上から確認できる範囲で確認する
- 安全に近づける場所かどうかを判断する
- 写真や資料などから確認できるか検討する
- 必要に応じて専門業者による確認を依頼する
など、その場の状況に応じて確認方法を選びます。
屋根に損害がありそうだからといって、屋根に上がって確認するわけではありません。
「確認できること」と「安全に確認できること」は別。
安全を確保しながら、できる範囲で損害を確認することも、現場調査では大切な判断の一つです。
持ち物だけでは損害調査はできない
ここまで紹介したように、現場にはさまざまな道具を持っていきます。
しかし、道具がそろっていれば、正確な損害調査ができるというわけではありません。
現場では、道具の使い方だけでなく、確認する順番や判断も重要になります。
まずは現場の安全を確認する
現場に到着したら、いきなり被害箇所の確認を始めるわけではありません。
建物の状態や周囲の状況を確認し、安全に調査できるかを判断します。
特に災害直後の現場では、見た目では分からない危険が残っている場合があります。
安全が確保できない場所については、無理に立ち入らないことが大切です。
建物全体を見てから細部を確認する
損害調査では、最初から細かい傷だけを見るのではなく、まず建物全体の状態を確認します。
そのうえで、被害が発生している場所を絞り込み、細部を確認していきます。
全体から細部へ順番に確認することで、被害の位置関係や広がりも把握しやすくなります。
写真・寸法・聞き取りを組み合わせる
写真だけでは分からないこともあります。 聞き取りだけでは確認できないこともあります。
そのため、
- 現場写真
- 寸法
- 建物の状態
- 契約者からの聞き取り
- 被災直後の資料
などを組み合わせて、損害の状況を整理します。
一つの情報だけで判断するのではなく、複数の情報を確認することが大切です。
鑑定人が現場で特に気をつけていること
現場に持っていく道具は、調査のために必要なものです。
しかし、実際の現場では、道具以外にも気をつけなければならないことがあります。
例えば、季節による気温の変化です。
夏場の現場では、暑さや熱中症への対策が必要になります。 冬場の現場では、防寒対策が必要になります。 雨の日には、道具や書類が濡れないようにする準備も必要です。
また、同じ地震の現場でも、建物の種類や被害の程度によって確認する内容は変わります。
水害の現場でも、床下まで浸水しているのか、床上まで浸水しているのか、泥や汚れが残っているのかによって、必要な準備が変わります。
現場に行く前に、どのような調査になるのかを想像し、必要なものを準備しておくことが大切です。
とはいえ、どれだけ準備をしていても、現場に行って初めて分かることもあります。
そのため、鑑定人にとっては、持ち物だけでなく、現場の状況に応じて判断する力も重要になります。
まとめ:現場調査に必要なのは道具と準備
損害保険鑑定人が現場に持っていくものには、さまざまな種類があります。
写真を撮影するための道具。 寸法を測るための道具。 聞き取りや記録に使うもの。 暗い場所や細かい部分を確認するもの。 そして、安全を確保するための装備。
基本的な持ち物は共通していますが、地震・水害・火災・台風など、現場の状況によって準備するものは変わります。
また、道具がそろっているだけでは、正確な損害調査はできません。
現場の安全を確認し、建物全体を見て、写真や寸法、聞き取りを組み合わせながら被害を記録していきます。
損害保険鑑定人の持ち物は、単なる仕事道具ではありません。
被害を正確に確認し、記録し、安全に調査するための準備の一部です。
現場に合わせた道具と装備、そして経験や判断力を使いながら、損害の状況を確認しています。

