罹災証明と火災保険の損害認定は何が違う?同じ家でも判定が異なる理由

保険

地震や大雨などの災害で住宅に被害を受けたとき、「罹災証明書」という言葉を耳にすることがあります。

また、地震保険に加入している場合には、保険会社による損害調査が行われ、「全損」「大半損」「小半損」「一部損」といった損害区分が決められます。

さらに、火災保険でも、事故によってどのような損害が発生したのかを確認し、保険金の支払いについて判断します。

ここで、

「罹災証明書で半壊だったら、地震保険でも同じ判定になるの?」

「罹災証明書の判定が、そのまま保険金の支払いに関係するの?」

と疑問に思う方もいるのではないでしょうか。

実は、罹災証明書の被害認定と、地震保険・火災保険の損害認定は、それぞれ別のものです。

同じ住宅を調査していても、結果が一致するとは限りません。

この記事では、損害保険鑑定人の視点から、罹災証明書、地震保険、火災保険の損害認定がどのように違うのか、そしてなぜ同じ住宅でも判定が異なることがあるのかを分かりやすく解説します。

この記事でわかること
  • 罹災証明書の被害認定と保険の損害認定の違い
  • 罹災証明書と地震保険で判定が異なる理由
  • 地震保険の「全損・大半損・小半損・一部損」とは
  • 災害に遭ったときに残しておきたい被害記録

罹災証明書と保険の損害認定は、そもそも別のもの

まず押さえておきたいのが、罹災証明書と保険の損害認定は、同じ目的で行われているものではないということです。

罹災証明書は、災害によって住宅がどの程度の被害を受けたのかを自治体が確認し、その被害の程度を証明するものです。

一方、保険の損害認定は、加入している保険契約に基づいて、保険金の支払いについて判断するために行われます。

さらに、地震保険には地震保険独自の損害認定基準があります。

つまり、

  • 罹災証明書=公的な被害認定
  • 地震保険=地震保険の損害認定
  • 火災保険=契約に基づく損害認定

と、それぞれ役割が違います。

そのため、同じ住宅を見ていても、必ず同じ結果になるわけではありません。


罹災証明書とは?

罹災証明書は、地震や台風、大雨などの災害によって住宅に被害を受けた場合に、その被害の程度を自治体が証明するものです。

自治体による調査では、住宅の被害状況を確認し、定められた基準に沿って被害の程度を判定します。

現在の「災害に係る住家の被害認定基準」では、住宅の経済的な被害を「損害割合」という形で評価し、次のように区分しています。

罹災証明書の区分住家全体の損害割合
全壊50%以上
大規模半壊40%以上50%未満
中規模半壊30%以上40%未満
半壊20%以上30%未満
準半壊10%以上20%未満
準半壊に至らない(一部損壊)10%未満

内閣府の「災害に係る住家の被害認定」では、この損害割合を、「住家の主要な構成要素の経済的被害が、住家全体に占める割合」として捉えています。

原則として、住宅の部位ごとの被害状況を確認・評価し、それをもとに住家全体の損害割合を算出して、被害の区分を判定します。

ここで大切なのは、罹災証明書の「損害割合」と、後で説明する地震保険の損害区分で使われる割合は、同じものではないということです。

どちらも「住宅がどの程度被害を受けたのか」を数字で表しますが、判定する制度や目的、基準が異なります。


地震保険にも独自の損害区分がある

地震保険の建物については、主要構造部の損害額などを基準として、次の4区分で損害の程度を判定します。

地震保険の損害区分建物の損害の基準
全損建物の時価の50%以上
大半損建物の時価の40%以上50%未満
小半損建物の時価の20%以上40%未満
一部損建物の時価の3%以上20%未満

このほか、焼失・流失した床面積や、一定の浸水によって一部損と認定される場合もあります。

そして、地震保険では、この損害区分に応じて支払われる保険金も決まっています。

全損なら地震保険金額の100%、大半損なら60%、小半損なら30%、一部損なら5%です。

たとえば建物の場合、主要構造部の損害額が建物の時価の50%以上であれば「全損」、40%以上50%未満なら「大半損」、20%以上40%未満なら「小半損」、3%以上20%未満なら「一部損」といった基準があります。

また、焼失・流失した床面積や浸水の状況などによって判定される場合もあります。

ここで大切なのは、地震保険の損害区分は、国が定める罹災証明書の被害認定基準とは異なるということです。

日本損害保険協会の資料でも、地震保険の損害区分は「地震保険損害認定基準」に基づいて行われ、罹災証明書などに用いられる「災害に係る住家の被害認定基準運用指針」とは異なることが明記されています。


名前が似ている「半壊」と「大半損」は同じではありません

ここは特に注意しておきたいところです。

たとえば、罹災証明書で「半壊」となった住宅があったとしても、地震保険で「大半損」になるとは限りません。

逆に、地震保険で「小半損」と判定されたからといって、罹災証明書でも同じような区分になるとは限りません。

なぜなら、それぞれで見ている基準が違うからです。

「半壊」と「大半損」は、言葉としてはどちらも大きな被害をイメージしますが、同じ尺度で測っているわけではありません。

この点を知らないと、

「罹災証明書では半壊なのに、なぜ地震保険では違うの?」

という疑問につながります。


「準半壊なのに一部損なんておかしい!」と言われたことがあります

実際に災害の現場で調査をしていると、こんなことを言われることがあります。

「罹災証明では準半壊と言われたのに、地震保険では一部損なんておかしくないですか?」

被災された方からすると、当然の疑問だと思います。

「準半壊」と「一部損」。

名前だけを見ると、どうしても「準半壊のほうが重い被害なのだから、保険でももっと上の区分になるはず」と感じてしまいます。

しかし、ここで知っておいてほしいのが、罹災証明書と地震保険では、そもそも認定基準が違うということです。

そして、もう一つ面白いのが、それぞれの区分を数字で見てみると、必ずしも大きくかけ離れているわけではないということです。

「準半壊」と「一部損」を数字で見てみる

罹災証明書では、準半壊は住家の損害割合が10%以上20%未満です。

一方、地震保険では、建物の損害が一定の基準に該当する場合、3%以上20%未満が「一部損」とされます。

つまり、

罹災証明書:準半壊 → 10%以上20%未満

地震保険:一部損 → 3%以上20%未満

となります。

もちろん、これは単純に「準半壊=一部損」と言っているわけではありません。

そもそも、何度もお伝えしていますが両制度では損害の算定方法や評価する範囲が異なります

ただ、区分の数字だけを見てみると、「準半壊」と「一部損」は、想像しているほど離れたものではないことが分かります。

「準半壊なのに一部損」という結果を見て、

「一部損ということは、保険では軽い被害と判断されたんですよね?」

と思ってしまうかもしれません。

しかし、必ずしもそういう意味ではありません。

区分の名前が違うだけで、実際に評価されている損害の範囲には重なる部分があります。

「準半壊」という言葉に引っ張られすぎない

これは、罹災証明書と地震保険を比較するときに非常に重要なポイントです。

私たちは普段、「半壊」「準半壊」「全壊」といった言葉を聞くと、それぞれに直感的な重さを感じます。

「全壊」なら大きな被害。

「半壊」ならその半分くらい。

「準半壊」ならさらに軽い被害。

そんなイメージを持ちやすいと思います。

しかし、地震保険の「一部損」も、決して「ほとんど被害がない」という意味ではありません。

それぞれの制度で決められた基準に照らして、その区分に該当しているということです。

そのため、

「準半壊」>「一部損」

と、単純に被害の大きさを比較することはできません。

大切なのは「名前」ではなく「どの基準で判定されたか」

災害後に罹災証明書を受け取ったり、地震保険の損害区分を聞いたりすると、

「こっちは準半壊なのに、保険は一部損なのはおかしい」

と思ってしまうことがあります。

しかし、そこで一度、それぞれの制度の基準に戻って考えてみてください。

罹災証明書の「準半壊」と、地震保険の「一部損」は、名前も違えば、判定の仕組みも違います。

罹災証明書の被害認定では、住家全体の経済的被害について、部位ごとの損害割合などをもとに住家全体の損害割合を算出します

一方、地震保険では、主要構造部の損害を建物の時価と比較する方法など、地震保険独自の損害認定基準によって判定します。

つまり、「10%」という数字が出てきても、罹災証明書の10%と地震保険の10%が同じ意味とは限りません。

10%という数字だけを見て比較すると、同じ基準に見えてしまいます。しかし、実際には“何を対象に、どのように算出した10%なのか”が違います。

日本損害保険協会も、地震保険の「全損・大半損・小半損・一部損」の認定は「地震保険損害認定基準」に基づくもので、国が定める「災害に係る住家の被害認定基準運用指針」とは異なると説明しています。

  • 罹災証明 → 住家全体の被害認定
  • 地震保険 → 地震保険の損害認定基準による判定
  • 火災保険 → 契約上の補償対象となる損害の確認

ですから、「準半壊なのに一部損」という言葉だけを見て、保険の判定が間違っていると判断することはできません。

もし判定そのものに疑問があるのであれば、「どの部分の損害が評価されたのか」「どの基準によってその区分になったのか」を確認してみるとよいでしょう。

損害保険鑑定人として現場を見る立場からすると、区分の名前だけを比較するのではなく、その裏側にある認定基準まで見ることが大切だと感じます。


では、なぜ数字が似ているの?

これは、それぞれの制度が「住宅の被害」を一定の基準で区分しているためです。

どちらも被害の大きさを数字や区分で表すため、一見すると対応しているように見えます。

しかし、実際には、

  • 何を損害として評価するのか
  • どの部分を対象にするのか
  • どのように損害割合を算出するのか
  • その区分を何のために使うのか

が異なります。

そのため、罹災証明書の区分と地震保険の損害区分を、そのまま1対1で対応させることはできません。

これは非常に重要なポイントです。


「半壊=小半損」とも限らない

同じことは、「半壊」と「小半損」についても言えます。

罹災証明書では、損害割合20%以上30%未満が「半壊」です。

一方、地震保険では、建物の主要構造部の損害額が時価の20%以上40%未満の場合が「小半損」です。

数字だけを見ると、

半壊=20~30%
小半損=20~40%

なので、「近いから同じくらいなのでは?」と思うかもしれません。

しかし、やはりここも単純には比較できません。

同じ「20%」という数字でも、何を分母・分子として計算しているのかが違うからです。

そのため、罹災証明書で「半壊」と判定された住宅について、

「では地震保険では小半損になるはず」

と判断することはできません。


数字を比較すると、むしろ「違い」が見えてくる

罹災証明書と地震保険の基準を並べてみると、数字が重なっている部分があることが分かります。

しかし、それは「両方が同じ尺度で住宅を評価している」という意味ではありません。

むしろ、ここで覚えておきたいのは、

数字が似ていても、認定基準が同じとは限らない

ということです。

災害後に「罹災証明書では○○だったのに、地震保険では違う判定になった」ということがあっても、必ずしも矛盾しているわけではありません。

それぞれの制度が、それぞれの目的と基準に基づいて住宅の被害を評価しているためです。

だからこそ、罹災証明書の「全壊・半壊」と、地震保険の「全損・大半損・小半損・一部損」は、名前だけで対応させるのではなく、それぞれ別の制度上の区分として理解することが大切です。


なぜ同じ住宅でも判定が違うの?

では、なぜ同じ住宅を見ているのに結果が違うのでしょうか。

一番の理由は、それぞれの制度で「何のために被害を判定するのか」が違うからです。

罹災証明書では、自治体が定められた被害認定基準に基づいて住宅の被害程度を判定します。

一方、地震保険では、地震保険の損害認定基準に基づいて、保険金の支払い区分を決めます。

つまり、「どちらが正しいのか」という話ではなく、「それぞれの制度の基準では、どう評価されるのか」という話なのです。

これは損害保険の現場でも非常に重要なポイントです。

住宅の被害を調査するとき、単純に「壊れている場所が多いから被害が大きい」と判断するわけではありません。

どの部分に、どのような損傷が発生しているのか。

その損傷が、どの基準に該当するのか。

そして、どの制度に基づいて判断するのか。

これによって結果が変わってくることがあります。


火災保険の損害認定は、地震保険とも違う

さらに話を複雑にするのが、火災保険です。

火災保険の損害認定は、地震保険のように「全損・大半損・小半損・一部損」という4区分だけで住宅全体を評価するものではありません。

火災保険では、まず何が原因で損害が発生したのかを確認することが重要になります。

たとえば、

  • 台風による強風で屋根が壊れた
  • 大雨による洪水で住宅が浸水した
  • 落雷によって設備が壊れた
  • 水漏れによって室内が濡れた

など、事故の原因によって確認するポイントが変わります。

そして、その事故が加入している保険契約で補償されるものなのか、実際にどのような損害が発生しているのか、損害額はいくらなのかといったことを確認します。

そのため、火災保険では、

「住宅全体が何割壊れたか」だけで保険金の支払いが決まるわけではありません。

ここが、罹災証明書や地震保険との大きな違いです。


罹災証明書・地震保険・火災保険を比較すると

ここまでの内容を整理すると、次のようになります。

罹災証明書地震保険火災保険
主体自治体保険会社側保険会社側
主な目的公的な被害の証明・支援制度など地震保険金の支払い保険金の支払い
主な基準住家の被害認定基準地震保険損害認定基準保険契約・約款など
主な区分・判断全壊・大規模半壊・中規模半壊・半壊・準半壊・
一部損壊
全損・大半損・小半損・一部損事故原因・補償対象・損害内容など
判定が一致する?必ずしも一致しない必ずしも一致しない

この表からも分かるように、同じ住宅の被害を見ていても、制度によって見方が違います。


「罹災証明書で半壊だから、保険金も半分」は間違い

災害後に特に注意したいのが、

「罹災証明書で半壊だったから、保険金も半分くらいになるのでは?」

という考え方です。

これは、そのまま当てはめることはできません。

罹災証明書の「半壊」は、あくまで罹災証明書における被害認定です。

地震保険であれば、地震保険独自の基準によって「全損・大半損・小半損・一部損」を判定します。

火災保険であれば、事故の原因や契約内容、実際の損害状況などをもとに保険金の支払いを判断します。

つまり、

罹災証明書の区分=保険金の支払い区分

ではありません。

ここは、災害に遭ったときに覚えておきたいポイントです。


罹災証明書がなくても火災保険は請求できる?

では、火災保険や地震保険を請求するときに、罹災証明書は必要なのでしょうか。

罹災証明書と保険の損害認定は別の制度なので、保険の請求に際して罹災証明書の提出は基本的に必要ありません。

実際、日本損害保険協会も、2026年の熊本地震に関する案内で、損害保険の保険金請求に際して地方自治体から交付される罹災証明書の提出は不要と案内しています。

ただし、実際に必要となる書類や確認方法は、保険の種類や契約、事故の内容などによって異なる場合があります。

「罹災証明書がないから保険の請求はできない」と考えるのではなく、加入している保険会社や代理店に確認することが大切です。


災害に遭ったら、被害の記録を残しておこう

罹災証明書と保険の調査は別のものですが、災害後に被害状況を記録しておくことは重要です。

可能であれば、片付けや修理をする前に、

  • 建物全体の外観
  • 被害を受けた部屋
  • 壁・床・天井などの損傷
  • 屋根や外壁などの外部損傷
  • 浸水した場合の水位
  • 壊れた設備
  • 被害を受けた家財

などを写真や動画で記録しておきましょう。

特におすすめなのが、近くから撮影した写真だけでなく、少し離れた位置から「住宅のどこが被害を受けているのか」が分かる写真も撮っておくことです。

ただし、災害直後は建物が不安定になっている場合があります。

危険な場所に入ってまで撮影する必要はありません。

まずは安全を確保したうえで、可能な範囲で記録を残しましょう。


罹災証明書の申請について

一般的には、被害を受けた住宅が所在する市区町村に申請することになりますが、具体的な申請方法や必要書類、受付期間などは自治体によって異なる場合があります。

災害が発生した場合には、住宅のある自治体の公式サイトなどで確認しましょう。

今回の記事で覚えておいてほしいのは、申請方法そのものよりも、

「罹災証明書の調査と、保険の損害調査は別のもの」

ということです。


まとめ

罹災証明書、地震保険、火災保険。

どれも災害による住宅の被害を確認するものですが、それぞれ目的も判断基準も異なります。

罹災証明書では「全壊」「半壊」など、地震保険では「全損」「大半損」「小半損」「一部損」などの区分を用います。

しかし、これらは同じ尺度で住宅を評価しているわけではありません。

そのため、

「罹災証明書が半壊だから、地震保険も大半損になる」

「罹災証明書で認定されなかったから、保険も対象外になる」

と単純に考えることはできません。

同じ住宅であっても、制度によって判定が異なることはあります。

大切なのは、「どちらが正しい・間違っている」と考えるのではなく、それぞれの制度が何を目的として、どのような基準で被害を見ているのかを理解することです。

災害に遭ったときには、罹災証明書の手続きと保険の請求をそれぞれ別のものとして考え、被害状況をできるだけ記録しておきましょう。

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