「地震保険に加入しているけれど、どのくらいの被害があれば保険金が支払われるの?」
「壁にひびが入ったけど、一部損になる?」
地震保険について調べていると、「一部損」という言葉を目にすることがあります。
一部損は、地震保険における4つの損害区分のうち、最も軽い区分です。
ただし、「一部損=少し壊れただけ」という単純な意味ではありません。
建物の場合は、主要構造部の損害状況などについて定められた認定基準に照らして判断され、一定の基準を満たした場合に「一部損」と認定されます。
この記事では、損害保険鑑定人として地震保険の調査に携わる立場から、一部損の認定基準や、実際にどのような点が確認されるのか、よくある勘違いについてわかりやすく解説します。
一部損とは?
地震保険では、建物や家財の損害の程度を、
- 全損
- 大半損
- 小半損
- 一部損
の4つに区分します。
一部損は、この4つの中では最も軽い損害区分です。
一部損と認定された場合、支払われる保険金は地震保険金額の5%です。
ただし、ここで注意したいのが、地震保険は火災保険のように、「修理にいくらかかったか」をそのまま補償する仕組みではないということです。
地震による損害の状況を確認し、定められた認定基準に基づいて損害の程度を判断します。
そのため、
「修理費が50万円かかったから、50万円の保険金がもらえる」
というような仕組みではありません。
また、「一部損」という言葉から、ほんの少し傷がついた程度の被害をイメージする方もいるかもしれません。
しかし、実際には一定以上の損害が認められた場合に、一部損として認定されます。
なお、地震による損害があったとしても、一部損の認定基準に満たない場合は、地震保険金は支払われません。
「地震で何かが壊れた=一部損」というわけではなく、定められた基準に達しているかどうかが重要です。
そのため、見た目には損傷があっても、地震保険の認定基準に満たない場合には、保険金の支払いが発生しないケースもあります。
地震保険の4つの損害区分については、こちらの記事で詳しく解説しています。
建物の一部損の認定基準
建物の一部損は、建物に生じた損害について、地震保険で定められた認定基準に基づいて判断されます。
建物の場合、主要構造部の損害額が建物の時価の3%以上20%未満となることが、一部損の認定基準のひとつです。
ここでいう「主要構造部」とは、建物の構造を支える重要な部分のことです。
たとえば、建物の構造や工法によって、次のような部分が確認対象となります。
- 基礎
- 柱・軸組
- 外壁
- 屋根
ただし、すべての住宅で同じ箇所を同じように確認するわけではありません。
建物の構造・工法に応じて定められた部位ごとの損害状況を確認し、それぞれの損害を基準に沿って評価したうえで、損害の程度を判断します。
例えば、木造住宅でも工法によって確認する部位が異なるほか、建物の構造や形状によっても損害の確認方法は変わります。
そのため、
「外壁にひびが入ったから一部損」
「基礎が少し割れたから一部損」
というように、ひとつの損傷だけで一部損と決まるわけではありません。
建物の構造や損害した部位、損害の程度などを確認し、定められた認定基準に沿って総合的に判断します。
「3%以上20%未満」は修理費の割合ではない
ここは特に誤解されやすいポイントです。
「建物の時価の3%以上」という数字を見ると、修理費の割合だと思うかもしれません。
しかし、これは単純に修理見積書の金額を建物の時価と比較するという意味ではありません。
地震保険では、損害の状況を確認したうえで、定められた基準に基づいて損害の程度を判断します。
そのため、修理見積書の金額だけを見て、
「50万円だから一部損」
「100万円だから小半損」
というように機械的に決まるものではありません。
「どの部分が、どの程度損傷しているのか」が重要になります。
修理費と認定基準は同じではない
たとえば、地震によって外壁に大きなひび割れが発生し、修理にはかなりの費用がかかるとします。
一方で、その損傷が地震保険の認定上どのように評価されるかは、修理にいくらかかるかでは決まりません。
建物の構造や損害した部位、損害の程度などを確認し、地震保険の認定基準に照らして判断します。
逆に、見た目には大きな損傷に感じても、地震保険の認定基準を満たさなければ、一部損として認定されないこともあります。
このため、地震保険では、
「いくらで修理できるか」ではなく、「地震によって建物にどの程度の損害が生じたか」
という視点が重要になります。
一部損になるのはどんな被害?
地震による住宅被害には、さまざまなものがあります。
たとえば、次のような損害が発生することがあります。
- 基礎の損傷
- 外壁のひび割れや損傷
- 柱や軸組などの損傷
- 屋根や屋根材の損傷
- その他、地震によって生じた建物の損傷
ただし、これらのうち、どれか1つに該当すれば一部損になるというわけではありません。
建物の構造や工法、損害した部位、損害の程度などを確認し、地震保険で定められた認定基準に照らして判断します。
また、地震によって発生した損害なのか、それとも地震とは関係のない経年劣化や施工不良などによるものなのかを確認することも重要です。
クロスのひび割れだけでも一部損になる?
地震の後、
「壁紙にひびが入った」
「クロスが裂けた」
といった損傷が見つかることがあります。
しかし、クロスにひび割れがあるというだけで、一部損と認定されるわけではありません。
クロスそのものは建物の主要構造部ではないため、クロスの損傷だけを見て一部損かどうかを判断することはできません。
一方で、クロスのひび割れが、地震による建物本体の変形や損傷に伴って発生している場合もあります。
そのため、見た目のひび割れだけではなく、どのような原因で発生した損傷なのか、建物全体にどのような損害が生じているのかを確認することが重要です。
家財の一部損は?
地震保険の一部損は、建物だけではありません。
家財についても、建物と同じように、
- 全損
- 大半損
- 小半損
- 一部損
の4区分で損害の程度を認定します。
家財の場合、一部損は、家財の時価の10%以上30%未満の損害が認定基準となります。
家財の損害認定では、家具や家電などを一定の品目ごとに分類し、それぞれの損害状況を確認します。
そのうえで、損害した家財の品目や損害の程度などを、地震保険で定められた基準に当てはめて損害の割合を算出し、その結果に応じて「全損」「大半損」「小半損」「一部損」などの区分を判定します。
そのため、「高額なテレビが1台壊れたから一部損になる」というように、修理費や購入価格で判断されるわけではありません。
たとえば、同じ「家電が壊れた」という損害でも、対象となる品目や損害の程度によって認定上の扱いが変わります。
一部損と認定された場合は、建物と同じく地震保険金額の5%が支払われます。
テレビが壊れたら一部損になる?
これは、地震保険でよくある勘違いのひとつです。
たとえば、地震でテレビが倒れて壊れた場合、
「テレビが壊れたから、テレビの修理費が地震保険から支払われる」
と考えるかもしれません。
しかし、家財の地震保険は火災保険のように、壊れたテレビ1台の修理費をそのまま補償する仕組みではありません。
家具や家電などの家財全体の損害状況を確認し、定められた認定基準に基づいて損害の程度を判断します。
そのため、テレビ1台の損害だけで、家財の一部損と認定されるわけではありません。
一部損だと保険金はいくら?
一部損と認定された場合、支払われる保険金は地震保険金額の5%です。
たとえば、地震保険金額が1,000万円の場合、
1,000万円 × 5% = 50万円
となります。
ただし、これは「修理費として50万円が支払われる」という意味ではありません。
地震保険では、損害の程度が一部損と認定された結果として、契約している地震保険金額の5%が支払われます。
そのため、
修理費が50万円だったから50万円支払われる
という考え方ではありません。
なお、地震保険の保険金額には火災保険金額に対する上限など、契約上の制限があります。
「一部損」と「一部破損」は違う
地震のニュースや自治体などの被害報告では、「一部破損」という言葉が使われることがあります。
一方、地震保険では「一部損」という言葉が使われます。
名前が似ているため混同しやすいのですが、この2つは同じものではありません。
行政機関などが公表する住宅被害では、
- 全壊
- 半壊
- 一部破損
などの区分が使われます。
これに対して、地震保険では、
- 全損
- 大半損
- 小半損
- 一部損
という区分で損害を認定します。
そのため、災害報道などで、
「一部破損○○棟」
と発表されていたとしても、その数字がそのまま「地震保険の一部損○○件」を意味するわけではありません。
この2つは、目的も認定基準も異なる別の区分です。
熊本地震の記事でも、行政上の「一部破損」という区分を使って住宅被害を紹介しています。
一部損の認定はどのように行われる?
地震保険の損害認定では、建物の構造や損害状況などを確認し、定められた認定基準に沿って損害の程度を判断します。
建物の場合は、基礎・柱・外壁・屋根など、建物の構造や工法に応じた確認箇所を調査します。
ただし、同じように見えるひび割れや損傷でも、その場所や原因によって認定上の扱いが変わる場合があります。
たとえば、地震によって発生した損傷なのか、以前からあった経年劣化なのかでは意味が異なります。
また、建物の構造によって確認する箇所や認定方法も異なるため、見た目の損傷だけで一部損かどうかを判断することはできません。
一部損と認定されないケース
地震によって住宅に何らかの損害が発生していても、必ず一部損として認定されるわけではありません。
たとえば、損害が一部損の認定基準に達していない場合は、地震保険金の支払い対象とはなりません。
また、損害の原因が地震ではなく、経年劣化や施工不良などによるものと判断される場合もあります。
「地震の後に壊れていることに気付いた」というだけで、その損害がすべて地震によるものとは限らないためです。
さらに、地震保険の対象とならない部分のみが損傷している場合なども、保険金が支払われないケースがあります。
つまり、
「地震で何かが壊れた=地震保険から保険金が支払われる」
というわけではありません。
損害の原因や範囲を確認し、地震保険の認定基準を満たしているかどうかが重要になります。
一部損についてよくある質問
一部損はどのくらいの被害ですか?
一部損は、地震保険における4つの損害区分のうち最も軽い区分です。
建物の場合は、主要構造部の損害状況などを確認し、定められた認定基準に基づいて判断されます。
「少し傷がついた」というだけで一部損になるわけではありません。
修理費が3%以上なら一部損になりますか?
いいえ。
「3%」という数字は、単純に修理費が建物の時価の3%以上という意味ではありません。
建物の損害状況を確認し、地震保険で定められた認定基準に基づいて判断します。
一部損に満たない場合はどうなりますか?
地震による損害があったとしても、一部損の認定基準に満たない場合は、地震保険金は支払われません。
そのため、損傷があるかどうかだけではなく、地震保険の認定基準を満たす損害なのかを確認することが重要です。
壁紙のひび割れだけでも一部損になりますか?
壁紙のひび割れだけで、一部損と認定されるわけではありません。
そのひび割れが地震による建物本体の損傷に伴うものなのかなど、損傷の原因や建物全体の状態を確認する必要があります。
テレビが壊れたら家財の一部損になりますか?
テレビ1台の損害だけで、家財の一部損と認定されるわけではありません。
家具や家電など、家財全体の損害状況を確認し、地震保険の認定基準に基づいて判断します。
一部損なら保険金はいくらですか?
一部損と認定された場合、地震保険金額の5%が支払われます。
たとえば、地震保険金額が1,000万円なら50万円です。
ただし、実際の契約内容や保険金額などによって異なる場合があります。
「一部損」と「一部破損」は同じですか?
同じではありません。
「一部破損」は行政上の住宅被害などで使われる区分で、「一部損」は地震保険の損害認定区分です。
名称は似ていますが、目的や認定基準が異なります。
まとめ
地震保険の「一部損」は、4つある損害区分のうち最も軽い区分です。
ただし、「一部損=少し壊れただけ」という意味ではありません。
建物の場合は、主要構造部などの損害状況を確認し、建物の構造や損害の程度などを踏まえて、定められた認定基準に基づいて判断されます。
また、地震保険は火災保険のように、実際にかかった修理費をそのまま支払う仕組みではありません。
そのため、
「修理費がいくらだったか」
だけではなく、
「地震によってどのような損害が発生し、地震保険の認定基準を満たしているか」
という点が重要になります。
地震保険についてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。





