過去の災害事例から学ぶ、保険でカバーできる損害とは

保険

はじめに:過去の災害から見える“備えの差”

台風・豪雨・地震など、日本では毎年のように自然災害が発生しています。
ニュースでは「被害総額◯億円」「保険金支払い◯万件」と報じられますが、実際の現場では——

「これも保険で直せるなんて知らなかった」
「同じ地域でも保険金が出た人と出なかった人がいた」

という声をよく耳にします。

この記事では、過去の災害事例をもとに「保険で補償される損害」「補償されにくいケース」を、鑑定人の視点でわかりやすく解説します。

災害別に見る「保険でカバーできる損害」

台風・豪雨による損害

台風では、風災・雨漏り・飛来物による破損が多く発生します。
たとえば以下のようなケースは、火災保険で補償される可能性があります。

✅ 保険で補償される可能性があるケース

  1. 強風で屋根瓦・スレートが飛散・破損した
  2. 強風で屋根が破損した結果、雨漏りが発生し、天井や内壁にシミ・破損が出た
  3. 雨樋が外れたり、破損して水があふれた
  4. カーポートやフェンスが風で倒壊した
  5. 飛来物(看板・木の枝・瓦など)で窓ガラスや外壁が破損した
  6. 風で門扉・シャッターが変形した、外れた
  7. ベランダの波板屋根・ポリカ板が飛んでしまった
  8. 強風でアンテナが倒れた
  9. 風による飛砂・飛来物で外壁や車庫の表面にキズがついた
  10. 飛来物が排水溝を塞ぎ、結果ベランダから雨漏りした

💡 ポイント
火災保険では「風災・水災・雪災」などの原因ごとに補償が分かれています。
突発的な外的要因による損害 であれば、補償の対象になるケースが多いです。

⚠️ 補償されにくい・対象外となるケース

  1. 締め忘れた窓や扉からの雨の侵入による浸水・家財損害
  2. 老朽化や経年劣化による屋根・外壁の損傷
  3. 瓦の隙間から雨が吹き込んだことによる雨漏り
  4. ベランダの排水口が詰まってあふれた水による室内浸水
  5. 雨が直接入り込んだだけで、建物の破損がないケース

これらのケースは「自然災害による突発的な損害」とは認められにくいため、経年劣化や管理不足 と判断されると支払いの対象外となることがあります。

実際の現場でも、「去年から少し雨漏りしていた」とお話しいただくことがあります。
このようなケースは、損害の原因が 台風か、経年による劣化か の判断が非常に難しく、鑑定でも慎重な検証が必要になります。

地震による損害

地震保険では、「地震・噴火・津波」を原因とする建物・家財の損害が補償されます。
火災保険だけでは地震被害はカバーされないため、セット加入が基本です。
ここでは、地震で補償されるケース・対象外になるケースを整理します。

✅ 保険で補償される可能性があるケース

  1. 地震で建物が傾いた、または基礎や外壁にひび割れが生じた
  2. 地震後の火災によって建物や家財が焼失した(※地震火災特約を含む)
  3. 地震が原因で発生した津波により、建物が流された
  4. 地震の揺れでテレビや家具が倒れて破損した
  5. 地震による崩落で屋根瓦・外壁が破損した

ただし、地震保険は 建物の主要構造部(軸組・基礎・屋根・外壁など) の損害の程度によって、
「全損」「大半損」「小半損」「一部損」のいずれかに区分されます。

認定区分に応じて支払金額が決まるため、
たとえば外壁の一部のひび割れや瓦の数枚の破損など、
軽微な損害では支払い対象にならない 場合もあります。

💡 ポイント:支払額の目安
地震保険は火災保険の「50%が上限」で、損害の程度(全損・半損・一部損)に応じて支払われます。
目安として「建物の20%以上が損害を受けた場合」に、部分的な支払い(小半損)となります。
国の制度で共通化されているため、どの保険会社でも支払額の基準は同じです。

⚠️ 補償されにくい・対象外となるケース

  • 建物の損害がなく、門・塀・垣のみが壊れた場合
  • 紛失または盗難による家財の損失
  • 地震発生日の翌日から10日を過ぎて発生した損害
  • 損害の程度が「一部損」に至らない損害
  • 経年劣化や施工不良によるひび割れ・沈下

💡 補足

実際の現場では「地震の揺れによる損害」と「経年劣化による損傷」の判断が非常に難しいことがあります。
微細なひび割れの場合、専門的な検証が必要です。
📸 建物や家財の被害は、 できるだけ早く・多角的に記録 しておくことが重要です。

落雷・雪害

台風や地震以外にも、次のような突発的な災害も対象となる場合があります。

  1. 落雷でエアコン・給湯器などが故障(建物)
  2. 落雷でパソコン・テレビなどの家電が故障(家財)
  3. 大雪でカーポートが倒壊

落雷や雪害は忘れがちです。契約している保険の補償対象か確認しておきましょう。

実際の事例から学ぶ「補償の線引き」


ある台風の被害で、「雨漏りがした」と申請されたお宅がありました。
実際に鑑定で確認すると、台風当日の飛来物による瓦の破損であったため、補償対象に。

一方で、同じエリア内の別のお宅では同様の損傷でも飛来物による傷ではなく「瓦の劣化」が原因であったため、支払い対象外に。
見た目が似ていても、「原因の特定」で結果が大きく変わるのが火災保険の特徴です。

被害を受けたからといって、必ず保証されるわけではありません。
必ず定期的なメンテナンスを行って、被害の予防をしましょう。

保険が下りなかったケースに共通するポイント

  • メンテナンス不足による経年劣化
  • 被害の写真や記録を残していなかった
  • 被害から数年後に申請した
  • 補償範囲(風災・水災など)を誤解し、契約時に外していた

👉 「証拠がない」「契約内容の理解不足」はよくある落とし穴です。
申請前に、保険証券の補償範囲と特約の有無 を確認しておきましょう。

契約時の補償設定が原因で「補償外」となるケースも多いため、代理店での見直しは定期的に行うのがおすすめです。

まとめ:保険は“知っている人”ほど助かる

過去の災害を振り返ると、「保険を知っていた人」と「知らなかった人」で差が出ることがわかります。
火災保険や地震保険は“災害が起きた後”ではなく、“起きる前”に確認しておくことが大切です。

📝 ポイントまとめ

  • 契約内容と補償範囲を定期的に見直す
  • 写真・記録を残しておく
  • 災害後はできるだけ早く連絡・申請を
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